大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京地方裁判所 昭和31年(ワ)2525号 判決 1957年3月19日

原告 ウエスターン・ハードウツド・ラムバー・カンパニー

被告 ウイリアム・ジエー・ハーマン・アンド・カンパニー・インコーポレツド

主文

右当事者間の北米合衆国カリフオルニア州ロスアンゼルス・スペリアー裁判所第六二六二七六号事件について、同裁判所が千九百五十五年二月二十四日言渡した判決に基いて強制執行をすることを許可する。

訴訟費用は被告の負担とする。

事実

原告は主文、第一、二項同旨の判決並びに仮執行の宣言を求め、その請求の原因として、

「原告は、北米合衆国カリフオルニア州の法律によつて設立され、同州ロスアンゼルス市に本店を置く米国法人、被告は東京都千代田区有楽町一丁目十番地に営業所を置き、日本において適法に登記されたパナマ国法人であるところ、主文掲記の事件について、千九百五十五年一月二十日原告及び被告間に『金一万千百弗の額の原告勝訴判決を裁判所に登録し、かつ右判決に基く強制執行は同年八月三十一日までこれをしない。』との訴訟上の合意が成立し、北米合衆国カリフオルニア州ロスアンゼルス・スペリアー裁判所は同年二月二十四日、右合意に基いて『被告ウイリアム・ジエイ・ハーマン・アンド・カンパニー・インコーポレツドは原告ウエスターン・ハードウツド・ラムバー・カンパニーに金一万千百弗の支払をせよ。この判決に基く強制執行は千九百五十五年八月三十一日まではできない。』との判決を言渡し、この判決はカリフオルニア州法により即日確定した。しかし被告は現在に至るまでその支払をしないので、右判決について執行判決を求めるため本訴提起に及んだ。」と述べ、

立証として、甲第一ないし第三号証、同第四号証の一、二、同第五号証を提出した。

被告は適法の呼出を受けながら本件準備手続期日及び口頭弁論期日に出頭せず、答弁書その他の準備書面をも提出しない。

理由

外国の公文書である甲第一号証及び第四号証の二、並びに本件弁論の全趣旨により真正に成立したものと認められる甲第二号証によれば、主文掲記の事件について、千九百五十五年一月二十日被告代理人ダブリユー・ウエ・ウオルミユ・ドイル・及びクレカク、原告代理人ヒル・アンド・アテイアス法律事務所を通じて、原告及び被告間に「金一万千百弗の額の原告勝訴判決を裁判所に登録し、かつ右判決に基く強制執行は同年八月三十一日までこれをしない。」との訴訟上の合意が成立し、北米合衆国カリフオルニア州ロスアンゼルス・スペリアー裁判所は同年二月二十四日、右訴訟上の合意に基いて、「被告ウイリアム・ジエー・ハーマン・アンド・カンパニー・インコーポレツドは原告ウエスターン・ハードウツド・ラムバー・カンパニーに対し金一万千百弗の支払をせよ。この判決に基く強制執行は千九百五十五年八月三十一日まではできない。」との判決を言渡し、この判決は同年二月二十八日同裁判所判決綴第二八六五冊一二五頁に登録されたこと、同年十一月三十日現在において右判決に対する上訴の申立、右判決の修正または取消は行はれていないだけでなく、カリフオルニア州法によれば両当事者の訴訟上の合意に基いて判決が言渡されかつ登録された以上、この判決(いわゆる同意判決)については、当事者は、原則として、その判決に存するかしについての一切の不服申立の権限を放棄したものとして、これに対し不服申立をすることを許されないものとされておるから、前記判決は前記判決綴に登録された日に確定したものであること、が明かである。本件弁論の全趣旨により真正に成立したものと認められる甲第三及び第五号証によれば、カリフオルニア州民事訴訟法にはその第千九百十五条に「外国の他の裁判所の終局判決は、その裁判所がその国の法律に基いてその判決を与える管轄権をもつているならば、その判決が行われた国におけると同様の効力をもち、かつ当州において行われた終局判決と同様の効力をもつものとする。」との規定があり、この規定により同州の裁判所が外国の判決に対しその効力を承認した先例もあるから、同州においては我が国の判決についても右規定によりその効力を承認するものと認められる。

よつて原告の本訴請求は正当であるからこれを認容し、訴訟費用の負担については民事訴訟法第八十九条を適用し、主文のとおり判決する。なお仮執行の宣言はその必要がないものと認めるからこれをしないこととする。

(裁判官 藤原英雄 立沢秀三 山木寛)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例